昭和医科大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センターでは、早産児動脈管開存症に対するカテーテル治療を行っています。
今回は、小児循環器・成人先天性心疾患センターの喜瀬医師に、早産児動脈管開存症とカテーテル治療について伺いました。
早産児動脈管開存症とは?
赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる間は、「動脈管」という血管が開いている必要があります。
この動脈管は、肺動脈と大動脈をつないでいる血管です。
通常は生まれた後に自然に閉じていくのですが、閉じずに開いたままになってしまう病気を「動脈管開存症」と言います。
特に早産児のお子さんでは、この動脈管が閉じにくいことがあります。
動脈管が開いたままだと、本来は体に流れるはずの血液が肺へ逃げてしまいます。
その結果、肺にたくさん血液が流れて負担がかかり、一方で体に流れる血液は減ってしまいます。
肺への負担だけでなく、体の成長や発達にも影響が出る可能性があるため、状態によっては治療が必要になります。
治療には3つの選択肢があります
早産児動脈管開存症の治療には、大きく分けて3つの方法があります。
まず一つ目が薬物治療です。
インドメタシンやイブプロフェンなどの薬を点滴で投与し、動脈管を閉じることを目指します。
二つ目が外科的治療です。
胸の脇を小さく切開し、動脈管を直接クリップや糸で閉じる方法になります。
そして三つ目が、カテーテル治療です。
足の付け根の血管から非常に細いカテーテルを入れて、心臓の近くまで進め、問題となっている動脈管を閉じます。
早産児に使用するカテーテルは、1〜2mmほどしかありません。
非常に小さなお子さんに対して行うため、繊細な技術が必要になります。
どのタイミングで治療が必要になるのか
動脈管が開いているからといって、すべてのお子さんが治療を必要とするわけではありません。
薬物治療で自然に改善するお子さんもたくさんいます。
一方で、
・肺に血液が流れすぎて負担がかかっている
・体に必要な血液が不足している
・今後の成長や発達への影響が心配される
このような場合には、次の治療を検討します。
薬物治療で十分な効果が得られず、体への影響が出ている場合に、外科治療やカテーテル治療をご提案しています。
カテーテル治療はどのように行うのか
カテーテル治療は、日本では2020年から行われるようになった比較的新しい治療です。
足の付け根にある「大腿静脈」という血管から、細いカテーテルを挿入します。
そのカテーテルを心臓の近くまで進め、問題となっている動脈管に到達させます。
そこへ、小さな閉鎖栓を留置して動脈管を塞ぎます。
イメージとしては、“コルクの栓”のようなものを血管の中に置いて、血液の流れを止める治療です。
カテーテル治療の大きなメリット
この治療の最大のメリットは、患者さんへの負担が非常に少ないことです。
早いお子さんでは、治療当日からミルクを飲めたり、栄養を再開できたりすることもあります。
外科手術と比較すると、傷も小さく、回復も早い。
それがカテーテル治療の大きな特徴です。
早産児への治療だからこその難しさ
ただ、早産児へのカテーテル治療は決して簡単ではありません。
他の先天性心疾患と大きく違うのは、患者さんの体が非常に小さいことです。
さらに、心臓だけでなく、肺や脳、消化管など、各臓器がまだ未熟な状態です。
そのため、心臓の治療を行う際にも、ほかの臓器へ影響が出ないかを細心の注意を払いながら進めています。
安全な治療を支える「チーム力」
この治療は、小児循環器医だけで完結するものではありません。
NICUの看護師、新生児科医、麻酔科医、心臓血管外科医、放射線技師、臨床検査技師、カテーテル室スタッフなど、多くの専門職が関わっています。
「どうすれば安全に治療できるのか」を、毎回チーム全体で話し合いながら進めています。
一つひとつの治療が終わるたびに、
・どんな課題があったか
・次に改善できる点はないか
をカンファレンスで振り返り、次の治療につなげています。
1,000g以下のお子さんにも治療を実施
昭和医科大学病院では、これまで10例以上の早産児動脈管開存症に対するカテーテル治療を行ってきました。
現在まで大きな合併症はなく、1,000g以下のお子さんに対しても安全にカテーテル治療を行うことができています。
これは、多職種が一丸となって治療に取り組んでいるからこそだと思っています。
親御さんへのメッセージ
「こんなに小さな子どもに、本当にカテーテル治療ができるのだろうか」
そうした不安を抱える親御さんも多いと思います。
昭和医科大学病院では、多職種が協力しながら、安全に治療を行える体制を整えています。
治療内容についても、
・どんな治療を行うのか
・どんな点に注意が必要なのか
・どのようなリスクがあるのか
を丁寧に説明させていただいています。
不安なことや分からないことがあれば、ぜひ外来でご相談いただければと思います。
コメント