こんにちは。昭和医科大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センターの喜瀬です。
本日は「小児の心筋炎」について、分かりやすくご説明いたします。
心筋炎とは?
心筋炎とは、心臓の筋肉(心筋)に炎症が起こる病気です。原因はウイルスなどの感染症が多いですが、身体の免疫反応によって起こることもあります。
特に小児の場合、かぜなどのウイルスが体内に入り、それが心臓の筋肉まで達することで心筋炎が発症することが多く見られます。
どんな人がかかるの?
心筋炎は、もともと健康だった子どもにも起こる可能性があります。基礎疾患がなくても、普通に過ごしていた子がかぜをひいた後、体がだるそう、元気がないなどの症状が続く場合、よくよく調べてみると心臓に問題が見つかるケースも少なくありません。
つまり、心筋炎は「誰にでも起こりうる病気」と言えます。
心筋炎の症状と重症度
心筋炎になると心臓のポンプ機能が低下し、うまく血液を全身に送り出せなくなることがあります。重症の場合は血圧が下がったり、失神を起こしたり、不整脈によって動悸や失神が生じることもあります。
また、心筋炎は大人だけでなく、小さい赤ちゃんから乳幼児、学童まで、全ての年齢で発症します。
診断と治療
症状が軽い場合は、心臓のポンプ機能に大きな影響がなく、経過観察や安静だけで回復することもあります。
一方で、明らかに心臓の機能が落ちている場合や不整脈が認められる場合は、ガンマグロブリンという炎症を抑える薬を使用したり、心臓の働きを助ける補助循環を導入する場合もあります。
不整脈に対しては、不整脈の種類に合わせて薬を使用したり、心臓の電気信号の異常が強い場合には一時的なペースメーカーで治療を行うこともあります。
再発と経過観察
心筋炎は再発することもありますが、頻度は稀です。
ただし、心筋炎を一度発症した後、心臓の機能が一時的に回復しても、時間が経ってから再び心臓の働きが低下することもあるため、治療後もしばらくは定期的に外来での経過観察が必要です。
ご家庭での注意点
ご家庭で心筋炎かどうかを判断するのは難しいですが、かぜの後、体調がなかなか回復せず、元気がない・胸が苦しい・吐いてしまう・お腹が動かない・呼吸が苦しいといった症状がある場合は注意が必要です。
特に、体の血液循環が悪くなっていると、呼吸が荒くなったり、肺うっ血のために呼吸困難が出ることもあります。
早めの受診をおすすめします
心筋炎は軽症で済む場合もあれば、重篤な状態になり命に関わることもあります。
「かぜの後、体調の戻りが悪い」「いつもと様子が違う」と感じた時には、迷わず早めに医療機関を受診し、小児科の先生やかかりつけ医に経過を伝えてください。
必要な検査を進めていく中で、心筋炎の診断につながります。少しでもご心配がある場合は、医療機関への相談をおすすめします。