肺静脈狭窄症は、肺から心臓へ血液を戻す「肺静脈」が狭くなる病気です。血液が心臓へ戻りにくくなることで肺にうっ血が起こり、呼吸や心臓の働きに影響を及ぼします。また、治療で狭い部分を広げても再び狭くなる「再狭窄」が起こりやすく、継続的な治療や経過観察が重要です。本記事では、当センターの喜瀬広亮医師の解説をもとに、肺静脈狭窄症の仕組みや原因、外科治療・カテーテル治療、再狭窄に対する薬物治療について紹介します。
肺静脈狭窄症は、肺から心臓へ戻る血液の通り道が狭くなる病気
肺静脈は、肺で酸素を受け取った血液を、心臓の左心房へ戻す血管です。左心房に戻った血液は左心室へ流れ、大動脈を通って全身へ送り出されます。
この肺静脈の一部が狭くなり、血液の流れが妨げられる状態が「肺静脈狭窄症」です。
肺で酸素を取り込むことができても、その血液が心臓へ十分に戻れなければ、肺から血液が流れ出しにくくなります。その結果、肺の血管に血液が滞る「うっ血」が起こります。
肺静脈は、肺で受け取った酸素を全身へ届けるために欠かせない通り道であり、この部分の狭窄は、肺だけでなく心臓や全身にも影響することがあります。
肺のうっ血から、呼吸や心臓への負担につながる
肺は、空気を取り込み、血液に酸素を渡すとともに、体でつくられた二酸化炭素を外へ出す臓器です。
肺静脈狭窄症によってうっ血が強くなると、肺に水分がたまりやすくなります。空気を含んだスポンジが水を吸ったような状態となり、酸素を取り込んだり、二酸化炭素を排出したりする働きが妨げられ、呼吸が苦しくなることがあります。
さらに病状が進むと、肺の血管の圧力が高くなる「肺高血圧」を伴い、心臓にも負担がかかります。重症化した場合には、生命に関わることもあります。
そのため、肺静脈の狭さだけでなく、肺のうっ血や呼吸の状態、心臓への負担をあわせて評価することが重要です。
肺静脈狭窄症の原因には、先天性のものと術後に生じるものがある
肺静脈狭窄症の背景として、生まれつきの狭窄と、心臓の手術後に生じる狭窄が挙げられます。
生まれつき肺静脈が狭い場合
先天性の肺静脈狭窄症では、肺から心臓へ血液が戻る通り道が、生まれつき狭くなっています。狭窄によって血液が流れにくくなり、肺や心臓への負担につながります。
心臓の手術後に狭くなる場合
心臓の手術後に、肺静脈の部分が狭くなることもあります。手術後の肺静脈狭窄は、術後の経過をみるうえで注意が必要な病態です。
原因やこれまでの治療経過を確認し、現在の狭窄の状態に合わせて治療方針を検討します。
狭くなった肺静脈を広げる、外科治療とカテーテル治療
肺静脈狭窄症に対しては、主に外科治療とカテーテル治療によって、血液の通り道を広げます。
いずれも、肺から心臓へ血液が戻りやすい状態にし、肺のうっ血や心臓への負担を軽減することを目的としています。
外科治療
外科治療では、手術によって肺静脈の狭くなった部分を広げ、血液の流れを妨げている狭窄を解除します。
手術には複数の方法があり、狭窄の場所や形、これまでの手術歴などに応じて、適切な方法を検討します。
カテーテル治療
カテーテル治療では、血管の内側から狭い部分を広げます。代表的な方法には、バルーンカテーテルを用いる治療と、ステントを留置する治療があります。
バルーンカテーテルは、先端に風船が付いた細い管です。狭くなった部分で風船を膨らませ、血管を広げます。
ステントは、金属製の網目状の筒です。狭窄した部分に留置し、血管を内側から支えて、血液の通り道を確保します。
どの方法を選択するかは、狭窄の状態やお子さんの体格、全身の状態などを踏まえて判断します。
治療後も再び狭くなる「再狭窄」が課題
肺静脈狭窄症の治療で大きな課題となるのが、治療後の再狭窄です。
外科治療で広げた場合も、カテーテル治療で広げた場合も、その後に血管の内側の組織が増殖し、再び血液の通り道が狭くなることがあります。この内側の組織の増殖は、「内膜の増殖」と呼ばれます。
再狭窄を繰り返す場合には、複数回の治療が必要になることがあります。また、進行すると肺静脈が閉塞し、血液が通りにくい状態がさらに深刻になる場合もあります。
一度広げた後も、血流が保たれているか、再び狭くなっていないかを継続して確認することが欠かせません。
再狭窄を抑えるための薬物治療
繰り返す肺静脈狭窄に対して、海外では免疫抑制薬を用いた薬物治療の有効性が報告されています。
この治療は、再狭窄の原因となる血管内側の組織の増殖を抑えることを目的としています。血管を広げる外科治療やカテーテル治療に加えて、再び狭くなる過程に働きかける治療です。
昭和医科大学病院では、倫理委員会の承認を得たうえで、この薬物治療を導入しています。
薬物治療を行うかどうかは、お子さんの病状やこれまでの治療経過などを踏まえて検討します。治療の適応や期待される効果、注意点については、個々の状態に応じて説明します。
複数の治療を組み合わせ、病状に応じた治療を続ける
肺静脈狭窄症は、再狭窄を繰り返すために治療が難しくなることのある病気です。狭窄を解除することと、その後の血流を維持することの両方を考える必要があります。
当センターでは、外科治療、カテーテル治療、薬物治療を病状に応じて組み合わせ、救命と病状の安定を目指した治療を行っています。
治療後も、肺静脈の状態や肺・心臓への負担を継続して確認し、必要に応じて治療方針を見直します。複数の治療法を検討しながら、長期的な視点で診療を続けることが重要です。
肺静脈狭窄症の治療についてのご相談
肺静脈狭窄症では、お子さんの状態やこれまでの治療経過によって、必要となる治療が異なります。再狭窄を繰り返している場合も、外科治療・カテーテル治療・薬物治療を含めた方針の検討が大切です。
昭和医科大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センターでは、外来で病状を確認し、治療方法や今後の方針について説明しています。肺静脈狭窄症の治療や術後の経過について、ご不明な点やご不安なことがありましたら、当センターへご相談ください。
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