左心低形成症候群とは？
左心低形成症候群は、生まれつき心臓の左側（左心室や大動脈、僧帽弁など）がとても小さく、十分に発達していない重い心臓の病気です。
心臓は右側と左側に分かれていて、左側は全身に血液を送り出す役割を担っています。しかし、左心低形成症候群では左側の機能が極端に弱いため、生まれたままでは全身に十分な血液を送ることができません。
このままでは命を守ることができないため、生まれてすぐに治療を開始しなければなりません。治療にはいくつかの段階的な外科手術が必要で、その第一段階が「Norwood-Sano手術」です。
Norwood-Sano手術とは？
Norwood-Sano（ノーウッド・サノ）手術は、左心低形成症候群の赤ちゃんが生まれて間もなく行う最初の大きな手術です。この手術の目的は、心臓の右側（右心室）を使って全身へ血液を送り出せるよう、心臓や大動脈の構造を作り替えることにあります。
通常、Norwood手術では人工血管を使って肺へ血液を送りますが、Norwood-Sano法では、人工血管（サノシャント）を右心室から肺動脈へ直接つなげる方法を採用します。これによって、肺への血流を安定させることができ、術後の合併症のリスクを減らす効果が期待できます。
手術の流れ
- 全身の状態確認と準備 生まれたばかりの赤ちゃんの全身状態や他の臓器の働きを詳しく調べます。必要に応じて点滴や呼吸管理をしながら手術の準備を進めます。
- 大動脈と心臓の作り替え 小さな大動脈を、肺動脈や人工血管を使って「新しい大動脈」に作り替えます。これにより、右心室の力で全身に血液が流れる仕組みを作ります。
- サノシャントの設置 右心室から肺動脈へ人工血管（サノシャント）をつなぎ、肺にも必要な血液が流れるようにします。これにより、肺と全身の血流バランスを細かく調整できるようになります。
- 他の修復や処置 必要に応じて、心房中隔の穴を拡げる（または開ける）処置なども同時に行います。
- 手術後の管理 手術が終わったら集中治療室（ICU）で厳重に全身管理を行います。心臓や肺、腎臓などの働きに気を配りながら慎重に回復をサポートします。
Norwood-Sano手術後の経過
手術後は、集中治療室で呼吸や心臓の働きを見守りながら、徐々に点滴や人工呼吸器のサポートを減らしていきます。赤ちゃんの状態が安定すれば、ミルクや母乳の練習も始まり、体重増加と全身の成長を見守ります。
Norwood-Sano手術は、左心低形成症候群の治療の第一段階です。赤ちゃんの成長と状態を見ながら、数か月後に次の段階の手術（グレン手術やフォンタン手術）が計画されます。これらの段階的な治療を経て、最終的には一つの心室（右心室）を使って全身に血液を送る仕組みを作り上げていきます。
Norwood-Sano手術の意義とポイント
- 赤ちゃんが生まれてすぐ、命を守るために最初に必須となる手術です
- 右心室を全身に血液を送るポンプ役に変える構造的な大手術
- サノシャントによる肺血流の安定で、術後の管理がしやすくなります
- 手術後も集中治療室での厳重な管理が必要です
- その後も段階的な手術やカテーテル治療を受けながら、長期的な成長と健康を見守っていきます
ご家族へのメッセージ
Norwood-Sano手術は非常に難易度の高い大手術ですが、日本をはじめ世界中の専門チームが日々進歩した医療技術をもとに安全に手術を行っています。
ご家族にとって大きなご不安があることと思いますが、赤ちゃんの命と成長のために多くの医療スタッフが全力でサポートします。どんなに小さなことでも、不安や疑問があれば遠慮なくご相談ください。みなさまと一緒に、お子さんの未来を見守っていきます。
