胎児心エコーについて
―赤ちゃんの「おなかの中の心臓」を安心して見守るために―
1. 胎児心エコーとは
「胎児心エコー」とは、お母さんのおなかの中にいる赤ちゃん(胎児)の心臓の発育や動きを、超音波(エコー)を使って詳しく観察・診断する専門の外来です。
赤ちゃんの心臓はとても小さいですが、妊娠初期から少しずつ形づくられ、妊娠20週ごろには細かい構造まで形成されます。
先天性心疾患は生まれてくる赤ちゃんの約100人に1人と比較的多くみられるため、胎児期に心臓の異常を早く見つけて適切な準備やサポートをすることがとても大切です。
□ こんなときにおすすめされます
- 妊婦健診や産婦人科のエコー検査で赤ちゃんの心臓に異常が疑われた場合
- 遺伝的な心臓病の家族歴がある場合
- 多胎妊娠(双子や三つ子など)の場合
- 妊娠中にお母さんが感染症にかかった場合(風疹、インフルエンザなど)
- 妊娠糖尿病、妊娠高血圧など合併症がある場合
- お母さんが心臓病や自己免疫疾患(SLE、膠原病など)を持っている場合
2. 胎児心エコーってどんな検査?
胎児心エコーは、産婦人科で行う通常の妊婦健診の超音波検査よりもさらに詳細に赤ちゃんの心臓だけを観察する専門的な検査です。
お母さんのおなかの上から専用の超音波機器を当てて、赤ちゃんの心臓の形・動き・血液の流れ・弁の動き・リズムなどを詳しくチェックします。
□ 痛みやリスクは?
- 胎児心エコーは痛みもなく、お母さんや赤ちゃんに害はありません。
- 被曝もなく、妊娠中の安全性が非常に高い検査です。
- 検査は20分~40分ほどかかります(赤ちゃんの位置や体動によってはさらに時間がかかることも)。
□ どんなことがわかるの?
- 心室や心房、弁、血管などの構造の異常
- 心臓の動きやポンプ機能の異常
- 血液の流れる方向やスピード
- 心拍リズムの異常(胎児不整脈など)
- 赤ちゃんの全身の血液循環の状態
3. なぜ胎児心エコーが必要なの?
□ 早期発見・早期対応のために
- 生まれる前に心臓の異常が見つかることで、「生まれてからの治療方針」や「適切な出産場所」「専門医によるフォロー」が準備できます。
- 重症な先天性心疾患の場合、出生直後から緊急治療が必要なケースもあります。
胎児心エコーで事前に診断がつけば、適切なタイミングで赤ちゃんの命を守る準備ができるのです。
□ ご家族の不安を和らげるために
- 胎児心エコーを受けることで、赤ちゃんの状態や見通しを詳しく知ることができ、不安や疑問を早めに解消できます。
- 必要な場合は、医師・コメディカルスタッフ・助産師などと一緒に、今後の治療や出産の計画を相談できます。
4. 検査の流れと外来でのサポート
□ 受診の流れ
- 紹介・予約
妊婦健診を受けている産婦人科やクリニックからの紹介状が必要な場合が多いです。
紹介状がある場合、できるだけ妊娠20~24週の間に一度受診することが推奨されます。 - 問診・診察
お母さんの健康状態、家族歴、妊娠中の経過、赤ちゃんの発育などについて詳しく問診 - 胎児心エコー検査の実施
専門の小児循環器医や胎児心臓を専門とする医師が担当します
おなかにゼリーを塗ってプローブを当て、画面で心臓の動きを確認 - 結果説明・カウンセリング
検査後すぐに、医師がわかりやすく画像を見せながら説明
異常があった場合も、今後の治療や出産の計画、退院後のサポート体制などを相談
必要があれば、他の医療機関と連携して「周産期管理」「手術計画」も立てます - 継続的なフォロー
異常が見つかった場合は、妊娠中に複数回の胎児心エコーを行い、赤ちゃんの状態や心臓の発達を見守ります
5. よくあるご相談・心配ごと
□ 胎児心エコーで「異常がある」と言われたら
- 異常の種類や重症度はさまざまです。
- すぐに手術や治療が必要な場合と、出産後に様子をみて治療を考える場合があります。
- どんな場合も、ご家族の気持ちに寄り添い、今できる最善のサポートや説明を大切にします。
□ 正常でも今後も安心?
- 胎児心エコーで異常が見つからなかった場合でも、ごくまれに生後に発見される心疾患もあります。
- 出産後も小児循環器専門医による診察や、必要に応じた検査を行います。
6. 外来で大切にしていること
□ ご家族への丁寧な説明とサポート
- わかりやすく画像を見せながら、医学用語をできるだけ避けて丁寧にご説明します。
- 不安や疑問はどんな小さなことでも何度でもご相談いただけます。
□ 他科・他施設との連携
- 産科、小児科、新生児科、心臓外科など多職種で協力し合い、ご家族と赤ちゃんの「その時」に最善の医療を提供します。
□ 精密な検査とフォロー体制
- 最新の超音波機器を用いて、国内有数の専門医が診断にあたります。
- 必要があれば、さらに精密な検査や治療計画を立て、出産後の受け入れ体制も整えています。
7. 出産やその後の流れについて
□ 出産の場所について
- 重症な心疾患がある場合、心臓専門病院またはNICU(新生児集中治療室)がある総合病院での出産をすすめられることがあります。
- 軽症の場合や経過観察でよい場合は、通常の産科施設での出産も可能です。
□ 生まれた後のサポート
- 出産後すぐに小児循環器専門医や小児心臓外科医が赤ちゃんの状態をチェックします。
- 必要なら早期に手術やカテーテル治療ができる体制を整えています。
- 退院後も定期的な診察・検査・育児サポートを行います。
8. ご家族へのメッセージ
おなかの赤ちゃんに「心臓の異常があるかもしれない」と言われると、どんな方でも驚きや不安、戸惑いを感じるのは当然です。でも、胎児心エコー専門外来での早期診断・早期準備は、お子さまの健康と命を守る大きな力になります。
検査を通じて、ご家族の疑問や不安を一つひとつ丁寧に解消できるよう、スタッフ一同全力でサポートいたします。もしも治療や手術が必要な場合でも、現代の医療では多くの赤ちゃんが元気に成長し、日常生活を送ることができています。
ご家族が一人で悩まず、どんな小さなことでも医師や看護師、専門スタッフにご相談ください。赤ちゃんとご家族が「安心して出産の日を迎えられる」よう、センター全体で寄り添い続けます。
9. まとめ
- 胎児心エコーは、おなかの赤ちゃんの心臓の状態を詳しく調べる外来
- 先天性心疾患の早期発見・早期対応により、お子さまの命を守り、ご家族の不安を和らげる
- 検査は痛みもリスクもなく、お母さん・赤ちゃんにやさしい
- 異常が見つかった場合も、専門医・多職種で手厚くサポート
- 出産・退院後まで長期にわたりご家族を見守ります