成人先天性心疾患外来について
―子どもから大人へ、ずっと安心して生きるための心臓ケア―
1. 成人先天性心疾患とは
先天性心疾患(せんてんせいしんしっかん)とは、生まれつき心臓や大きな血管の形や働きに異常がある病気です。手術や治療により多くの子どもたちが元気に成長し、今では大人になってからも社会生活を送る方が増えています。
「成人先天性心疾患外来」とは、こうした先天性心疾患を持って生まれた方が大人になった後も、専門的に健康管理や治療、相談を受けられる外来です。子ども時代に手術や治療を受けた方が、将来も安心して過ごせるよう、長期にわたりサポートします。
2. どうして大人になっても専門的な診療が必要なの?
□ 成長・加齢とともに起こる変化
- 子ども時代に手術や治療を受けても、年齢とともに心臓や血管の状態が変化することがあります。
- 手術した部分や人工弁・人工血管、心臓の傷が大人になるにつれ負担となったり、時には再手術が必要になったりします。
- 大人になってから初めて現れる合併症(不整脈、心不全、肺高血圧、弁機能障害など)もあります。
□ 成人期ならではの悩みや不安
- 就職、進学、結婚、妊娠・出産など、人生の節目ごとに心臓への影響や配慮が必要です。
- 運動・スポーツ、飲酒・喫煙、旅行や生活習慣についても細やかなアドバイスが必要です。
- 薬の飲み方や自己管理、他の病気との合併症(高血圧や糖尿病など)も含めてトータルなサポートが求められます。
□ 「小児科から内科へ」のスムーズな移行(トランジション)
- 18歳前後を機に、小児科から成人診療科(循環器内科など)へ移る方が増えます。
- 診療科が変わっても「自分の心臓の病気」をきちんと理解し、必要な検査や治療を継続できるよう支援します。
3. 成人先天性心疾患外来では何をするの?
□ 定期的な健康チェック
- 心臓超音波検査(心エコー)、心電図、レントゲン、CT、MRIなど最新の機器を使い、心臓や血管の状態を詳しくチェックします。
- 手術した部分や人工物(弁・血管)の状態、不整脈の有無、心機能の変化を専門医が細かく評価します。
□ 日常生活・社会生活のサポート
- 就労・進学・転居など、生活の節目での健康管理やアドバイス
- 妊娠・出産については、産婦人科と連携してサポート
- 日常の運動、食事、生活習慣病の予防・治療についても具体的にアドバイスします
□ 精神的・社会的なサポート
- 病気に対する不安、職場や学校での悩み、友人やパートナーとの関係についても、医師・看護師・ソーシャルワーカーが一緒に考えます
- 必要に応じて心理士やカウンセラーとも連携します
□ 他科との連携
- 必要があれば、循環器外科、心臓血管外科、小児科、婦人科、内分泌科など他科とも連携し、全人的なケアを行います
4. どんな方が対象になるの?
- 生まれつき心臓や大血管に異常があり、小児期に手術や治療を受けた経験がある方
- 現在は症状が落ち着いている方も、定期的なチェックが大切です
- 大人になってから新たに「先天性心疾患」が発見された方
- 他院でフォロー中でも、より専門的な意見や治療法を知りたい方も対象です
5. よくみられる先天性心疾患の種類
- 心室中隔欠損症(VSD)、心房中隔欠損症(ASD)
- ファロー四徴症(TOF)
- 完全大血管転位(TGA)
- 大動脈縮窄症
- 単心室症、総肺静脈還流異常症、エプスタイン病
- 肺動脈弁狭窄症、大動脈弁狭窄症
- その他、複雑な心奇形・多くの手術歴がある方
6. 成人先天性心疾患外来の特徴と強み
□ 小児循環器と成人循環器のエキスパートが連携
- 小児期から成人期まで一貫して診療する「トランジション・プログラム」を持っています
- 難しい病気や特殊な手術後の状態も、多くの症例と経験をもとに最適な管理・治療方針を提案します
□ 最先端の医療設備・多職種サポート
- 心臓超音波、MRI、CT、心臓カテーテルなど最先端の検査機器を完備
- 医師、看護師、薬剤師、心理士、ソーシャルワーカーが連携し、多面的なサポートを提供
□ 女性のライフステージにも対応
- 妊娠や出産を希望される女性への特別なケアプログラム
- 産婦人科や新生児科と連携し、妊娠・分娩時のリスク管理と安心の体制
□ 長期的な見守りと安心
- 成人後も「ずっと診てくれる」「いつでも相談できる」主治医・専門外来としてご家族にも安心していただけます
7. 受診の流れ
- 予約・問い合わせ
他院からの紹介状があるとスムーズです
紹介状がない場合も相談できます - 初診・問診
今までの手術歴や治療歴、現在の症状、生活状況を詳しくお聞きします - 必要な検査
心エコー、心電図、レントゲン、CT、MRIなどを実施 - 診断・治療方針の説明
検査結果をもとに、今後の治療や生活管理について丁寧に説明します
わかりやすい図や画像を使い、ご本人やご家族と一緒に治療方針を決定 - 定期的なフォローアップ
安定している場合も年1~2回の定期受診を推奨
状況に応じて必要な時は早めに相談・受診できる体制
8. ご家族へのメッセージ
お子さんが先天性心疾患で手術や治療を受け、無事に成長して成人を迎えたとき、ご家族はほっとする一方、「この先どんなことに気をつければいいの?」「仕事や結婚、妊娠・出産は大丈夫?」といった新たな不安や疑問が出てくることも多いでしょう。
成人先天性心疾患外来は、「子どもから大人へ」人生のステージが変わっても、ずっと寄り添い見守る外来です。患者さん本人はもちろん、ご家族やパートナーの悩みや希望も大切にしながら、医療チームが一緒にサポートします。
病気の進行や再発の早期発見はもちろん、社会生活やライフイベントへの支援、心理的なケアまで幅広く対応します。困ったこと、悩んでいることがあれば、どんな小さなことでも遠慮なくご相談ください。
9. まとめ
- 成人先天性心疾患外来は、子ども時代に先天性心疾患で治療を受けた方が大人になってからも専門的なケアやフォローを受けられる外来
- 定期検査と長期的な見守りで、健康維持と安心の社会生活をサポート
- 妊娠・出産、仕事・進学、生活習慣など人生のさまざまな場面を専門医・多職種チームでサポート
- ご家族と医療スタッフが一緒に、患者さんの未来を見守ります