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小児の期外収縮について

―お子さまの「ときどき心臓がドキッとする不整脈」をやさしく解説します―

1. 期外収縮とは

「期外収縮(きがいしゅうしゅく)」とは、心臓が本来のリズム以外のタイミングで、突然「余分な収縮(ドキッ)」をしてしまう状態をいいます。これは不整脈の一種で、子どもでもよく見られる現象です。

【正常な心臓のリズム】

  • 心臓は「ペースメーカー」と呼ばれる部分から規則正しく電気信号が送られ、それに合わせて収縮(心拍)を繰り返します。
  • そのおかげで全身に血液を送り続けています。

【期外収縮の場合】

  • 本来のリズムとは別の場所から突然電気信号が出て、予定外に「ドキッ」と拍動が起こります。
  • これを「余分な拍動」「飛び込みの拍動」などと表現することもあります。

2. なぜ起こるの?

期外収縮は、子どもから大人まで誰にでも起こることがあるごく一般的な現象です。
特に健康な小児でよく見られます。

子どもの場合によくある理由

  • 成長の過程で自律神経が未熟
    • 心臓や神経がまだ発達途中で、リズムが乱れやすい
  • ストレスや疲れ、睡眠不足
    • 学校や習い事、運動で疲れたり、睡眠が足りないと起こりやすい
  • 発熱、風邪、病気
    • 熱や体調不良のときに増えることがある
  • カフェインの摂取
    • お茶やコーラ、エナジードリンクなどを多く飲んだとき
  • 思春期のホルモンバランスの変化
    • 思春期によく見られる

基本的には「一時的な現象」で、健康上の問題にならないことがほとんどです。

3. どんな症状が出るの?

多くの場合、無症状です。
健康診断や学校健診、病院での心電図検査で「期外収縮が見つかりました」と言われて初めて気づくケースが多いです。

自覚症状がある場合

  • 「ドキッ」「ドクン」とした不意の心臓の動きを感じる
  • 胸が「一瞬止まった気がする」「飛ぶ感じがする」
  • ときどき胸が苦しい、違和感がある
  • 動悸(どうき)や脈の乱れを感じることがある

症状があっても一時的で、すぐに落ち着くことが多いです。

4. 期外収縮には2つのタイプがある

心臓のどこから「余分な信号」が出るかによって大きく2つに分かれます。

1. 上室性期外収縮(じょうしつせいきがいしゅうしゅく)

  • 心房や心房近くの部位から発生する
  • 小児の期外収縮の多くはこのタイプ
  • 一般的には心配のない、良性の不整脈

2. 心室性期外収縮(しんしつせいきがいしゅうしゅく)

  • 心室という下側の部屋から発生する
  • 少しドキッと大きめに感じることがある
  • これも多くは心配いらないが、まれに病的な場合もあるため、医師の評価が必要

5. どうやって診断するの?

健診や診察で発見されることが多い

  • 学校や乳児健診の心電図検査
  • 風邪や発熱などで病院受診時にたまたま心電図をとったとき

詳しく調べるときに行う検査

  • 心電図検査
    • 心臓のリズムや期外収縮の有無・頻度を確認
  • ホルター心電図(24時間心電図)
    • 小さな機械をつけて普段通りの生活の中で心電図を記録
  • 心エコー(心臓超音波)検査
    • 心臓の構造や機能に異常がないか調べる

診断のポイント

  • 多くの場合、心臓自体がしっかり動いていて、他の異常がなければ問題ありません
  • 期外収縮の回数や発生するリズム、背景に他の心臓病がないかをチェックします

6. 期外収縮が見つかったときの対応

健康な子どもの場合

  • ほとんどの場合、治療は不要です
  • 日常生活に制限はなく、運動や学校生活も普通にできます

生活で気をつけること

  • 規則正しい生活を心がける
    • 十分な睡眠、バランスのよい食事
  • 疲れやストレスをためない
  • カフェインをとりすぎない(コーヒー、エナジードリンク、炭酸飲料など)
  • 発熱時や風邪のときは無理せず安静に

症状が強い・頻度が多い場合

  • 頻繁に期外収縮が続いたり、症状が強い場合は、医師に相談しましょう
  • 心電図や心エコーで詳しく調べ、必要に応じて経過観察やごくまれに薬の使用を検討します

7. 期外収縮で注意が必要なケース

ごくまれに、期外収縮の背景に他の心臓の病気が隠れていることもあります。以下のような場合は、必ず医師の診察を受けましょう。

  • 息切れ、胸の痛み、失神(意識を失う)、めまいなど強い症状がある
  • 運動時に症状が出る・悪化する
  • 家族に突然死や重い心臓病の人がいる
  • 心臓の形や働きに異常があると指摘されたことがある
  • 期外収縮が非常に多く、1日に何千回も出ていると言われたとき

これらの場合、ホルター心電図や心エコー、運動負荷試験など詳しい検査が必要です。

8. 治療が必要な場合は?

期外収縮のほとんどは治療が不要ですが、次のような場合には治療を検討します。

  • 症状が強くて日常生活に支障があるとき
  • 期外収縮の頻度が非常に多いとき(1日の心拍数の10%以上など)
  • 他の心臓病が見つかった場合

治療には抗不整脈薬(不整脈を抑える薬)を使うことがあります。
ただし、薬には副作用もあり、安易に投薬することはありません。専門医と相談しながら慎重に決めます。

9. 期外収縮の経過と予後

多くの小児の期外収縮は成長とともに自然と減っていくことが多いです。
思春期を過ぎるころには気にならなくなることがほとんどです。

  • 長期的な健康への影響はほとんどありません
  • 運動やスポーツも医師が許可すれば通常通り可能
  • 一度診断されても、年に一度程度の定期健診で様子をみることが多い

10. ご家族へのメッセージ

お子さんの「期外収縮」と言われると、初めて聞く言葉に不安や戸惑いを感じることと思います。ですが、子どもの期外収縮の多くは一時的な現象で、健康上の大きな問題にはなりません。

ご家族が心配しすぎてお子さんに無理な制限をかけたり、不安を伝えすぎたりしないことも大切です。

もし分からないことや気になることがあれば、遠慮せずに主治医や看護師、医療スタッフに相談してください。
ご家族と医療チームが協力して、お子さんの健やかな成長を見守りましょう。

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