動脈管開存症(PDA)とは?
赤ちゃんが生まれる前、おなかの中にいる間は「動脈管(どうみゃくかん)」という血管が心臓の大動脈と肺動脈をつないでいます。
この血管は、赤ちゃんが外の世界で呼吸するようになると、自然に閉じる仕組みになっています。しかし、生まれた後も動脈管が閉じずに残ってしまうことがあり、これを「動脈管開存症(どうみゃくかんかいぞんしょう)」と呼びます。
動脈管が開いたままだと、体に送り出すはずの血液が一部肺の方に戻ってしまい、心臓や肺に余計な負担がかかります。小さい動脈管であれば無症状のことも多いですが、穴が大きい場合は呼吸が苦しくなったり、体重がなかなか増えなかったりすることがあります。
症状と発見のきっかけ
- 産科健診や新生児健診での心雑音(心臓の音の異常)で気付かれることが多いです。
- 症状が軽い場合は見逃されやすいですが、心臓に大きな負担がかかると、呼吸が早くなったり、ミルクを飲む量が減ったり、発育が遅れることもあります。
- 風邪を引きやすくなったり、肺炎になりやすいこともあります。
動脈管開存症の治療方法
動脈管開存症の治療には、大きく分けて「薬による治療」「カテーテル治療」「手術治療」があります。近年は、体への負担が少ない「カテーテル治療」が主流となっています。
薬による治療
- 主に未熟児(早産児)の場合に行われます。
- 動脈管を閉じる作用のあるお薬を点滴や内服で投与します。
- 正期産の赤ちゃんや大きなお子さんには効果が限られるため、通常は次のカテーテル治療や手術を検討します。
カテーテル治療とは?
「カテーテル治療」とは、お子さんの足の付け根などから細い管(カテーテル)を血管の中に通し、動脈管のところまで運びます。そのカテーテルを使って、動脈管に小さな“栓”(コイルやプラグ)を入れて穴をふさぐ治療です。
カテーテル治療の特徴
- 開胸手術をしないため、体への負担が少ない
- 傷も小さく、回復が早い
- 入院期間も短くて済むことが多い
- 成功率が非常に高く、安全性も高い治療です
治療の流れ
- 事前検査
心エコー(超音波検査)、レントゲン、心電図、血液検査などでお子さんの全身状態を確認します。 - カテーテル治療当日
基本的に全身麻酔または静脈麻酔で行います。
足の付け根の血管(大腿静脈・大腿動脈)からカテーテルを挿入します。
レントゲン透視や超音波で動脈管の位置・大きさを確認し、適切なデバイス(コイルやプラグ)を選びます。
カテーテルを使って動脈管に栓を入れ、穴をふさぎます。 - 治療後の経過観察
数時間~翌日まで経過観察します。
問題がなければ、数日後には退院できます。
治療後の注意点と経過
- 治療後は、ふだん通りの生活が送れるお子さんがほとんどです。
- 治療による再発(再び穴が開くこと)は非常にまれです。
- 定期的に心エコーや診察を受け、心臓の状態をチェックします。
- まれに、発熱やカテーテルを入れた部位に痛み・腫れがみられることがありますが、多くは自然に良くなります。
よくある質問(Q&A)
Q. カテーテル治療は何歳からできますか?
A. 体重や動脈管の大きさによって異なりますが、一般的には体重が5kg以上のお子さんであれば安全に行えることが多いです。
Q. 治療の痛みはありますか?
A. 治療中は麻酔が効いているため痛みはありません。治療後も、大きな痛みを感じることはほとんどありません。
Q. 治療後に運動や学校生活は普通に送れますか?
A. 特別な制限はほとんどなく、多くのお子さんがふだん通りの生活にすぐ戻れます。
Q. 他にどんなリスクがありますか?
A. ごくまれに、カテーテル治療に伴う合併症(出血、感染、血管の損傷など)が起こることがありますが、医療チームがしっかり対応します。
ご家族へのメッセージ
動脈管開存症のカテーテル治療は、近年とても安全で体への負担も少ない方法として広く行われるようになりました。
お子さんの成長や将来の生活のためにも、気になることや不安なことがあれば、どんなことでも主治医やスタッフにご相談ください。私たち医療チームが全力でサポートします。