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未熟児動脈管開存症とは?

赤ちゃんは、お母さんのおなかの中にいる間、「動脈管(どうみゃくかん)」という血管が心臓の大動脈と肺動脈をつないでいます。この動脈管は、おなかの中で過ごす赤ちゃんにとって大切な通り道です。赤ちゃんが生まれ、外の世界で自分の呼吸を始めると、多くの場合この動脈管は自然に閉じます。

ところが、特に早く生まれた「未熟児(早産児)」の場合、この動脈管がなかなか閉じずに開いたままになってしまうことがあります。これを「未熟児動脈管開存症」と呼びます。

未熟児動脈管開存症があると、本来体の隅々に送るはずの血液が、動脈管を通して肺の方へ逆戻りしてしまい、心臓や肺に大きな負担がかかります。これが続くと、呼吸が苦しくなったり、体重が増えにくくなったり、重症な場合は命に関わることもあります。

未熟児動脈管開存症の治療法

未熟児動脈管開存症の治療には、「薬による治療」と「カテーテル治療」、そしてまれに「手術治療」の3つがあります。

薬による治療

まず最初に行われるのは、動脈管を閉じるためのお薬を使った治療です。インドメタシンやイブプロフェン、アセトアミノフェンといった薬を使い、動脈管が自然に閉じるのを促します。多くの場合、この薬による治療で動脈管が閉じることが期待できます。

しかし、薬が効かない場合や、薬の副作用が強い場合、または動脈管が大きすぎて薬では対応できない場合には、別の治療が必要になります。

カテーテル治療とは?

薬で動脈管が閉じない場合、「カテーテル治療(カテーテル閉鎖術)」が選択されることがあります。カテーテル治療とは、赤ちゃんの太ももや首の細い血管から「カテーテル」と呼ばれる細い管を挿入し、その管を通じて動脈管の部分まで特殊な“栓”(コイルやプラグなど)を運んで、動脈管を内側からふさぐ治療法です。

未熟児のカテーテル治療の特徴

未熟児は体が小さく、血管もとても細いため、従来は体重がある程度増えてからでないとカテーテル治療は難しいと考えられてきました。しかし、最近では医療技術や器具の進歩によって、1kg前後のごく小さな赤ちゃんでも安全にカテーテル治療ができるようになってきました。

主な特徴と利点

  • 胸を開く手術をせずに済み、体への負担が小さい
  • 治療にかかる時間も短く、回復も早い
  • 治療後は早期の呼吸状態改善や、体重増加の期待が持てる
  • 合併症のリスクが比較的低い

カテーテル治療の流れ

  1. 事前の全身評価と準備
    赤ちゃんの全身状態を評価し、心臓エコーなどで動脈管の大きさや形を詳しく調べます。治療に耐えられる体調かどうか慎重に判断します。
  2. 治療当日
    治療は通常、NICU(新生児集中治療室)内やカテーテル専用の治療室で行われます。赤ちゃんが眠っている間に、足の付け根や首の血管からカテーテルを挿入します。
  3. 動脈管へのデバイス設置
    カテーテルの先端から、動脈管の大きさに合った「栓(デバイス)」を動脈管に送り込み、正確に設置します。設置後は心エコーやレントゲンで、血流がしっかり止まっているか、栓の位置に問題がないかを丁寧に確認します。
  4. 治療後の観察と管理
    治療後は引き続きNICUで慎重に経過を観察します。呼吸の状態や全身の循環、栓を入れた血管の様子などをチェックし、問題がなければ徐々に通常のケアに戻します。

治療後の経過と注意点

カテーテル治療後、多くの赤ちゃんは呼吸が楽になり、心臓や肺への負担が減ることで体重の増加も期待できます。治療による合併症(出血や感染、血管の損傷など)はごくまれですが、万が一に備えて治療後もしばらくは厳重な観察を続けます。

治療の経過が順調であれば、早期に人工呼吸器や酸素投与が外れることもあります。退院後も定期的に心エコーなどで動脈管や心臓の状態を確認しながら、赤ちゃんの成長を見守っていきます。

ご家族へのメッセージ

未熟児動脈管開存症は、体の小さな赤ちゃんにとってとても大きな負担となる病気ですが、近年はカテーテル治療という新しい選択肢が広がっています。

赤ちゃん一人ひとりの状態を丁寧に評価し、最適な治療を選ぶことで、より安全に、より元気に育っていけるよう医療チーム一同でサポートしていきます。

不安や疑問、気になることがあればどんな小さなことでも遠慮なく医師や看護師にご相談ください。ご家族と一緒に赤ちゃんの健やかな成長を見守ります。

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