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冠動脈瘻とは?

冠動脈(かんどうみゃく)は、心臓そのものに酸素や栄養を運ぶ大切な血管です。通常、この冠動脈は心臓の筋肉に細かく枝分かれし、血液を届けています。

ところが、生まれつき、冠動脈の一部が本来つながるべきではない心臓の部屋(心房や心室)や大きな静脈、肺動脈などにつながってしまっていることがあります。これが「冠動脈瘻(ろう)」です。

冠動脈瘻があると、心臓に必要な血液が本来のルートから“横道”にそれてしまい、心臓の筋肉に十分な血液が届かなくなる恐れがあります。また、余分な血流が心臓や肺に負担をかけ、成長とともに症状が出てくる場合もあります。

症状と発見のきっかけ

冠動脈瘻は、穴が小さく症状が軽い場合はほとんど無症状で過ごすこともあります。しかし、瘻が大きい場合には、心雑音をきっかけに健診や病院で見つかることが多いです。さらに進行すると、動悸や息切れ、成長不良、まれに心不全の症状が現れることもあります。

冠動脈瘻の治療方針

冠動脈瘻の治療は、瘻の大きさや流れる血液の量、症状の有無によって決まります。小さい瘻で無症状の場合は経過観察のみとすることもありますが、心臓や肺への負担が大きい場合や将来的な合併症を予防するために治療が必要と判断されることもあります。

従来は外科手術で瘻を直接縫い閉じる方法が主流でしたが、現在では体への負担が少ない「カテーテル治療(カテーテル閉鎖術)」が多くの施設で行われるようになっています。

カテーテル治療とは?

カテーテル治療は、胸を切ることなく、太ももの付け根や手首の血管から「カテーテル」と呼ばれる細い管を心臓まで進め、冠動脈瘻の出口部分に特殊な“栓”や“コイル”を送り込んで内側からふさぐ治療法です。カテーテル治療は、体への負担が少なく、入院期間も短いのが大きな特徴です。

治療の流れ

  1. 事前検査と評価
    心エコー(超音波検査)、心臓カテーテル検査、CTやMRIなどで瘻の位置・大きさ・形を詳細に調べます。全身状態や他の心臓の異常がないかもチェックします。
  2. 治療当日
    全身麻酔や静脈麻酔のもと、お子さんが眠っている間に治療を行います。
  3. カテーテルの挿入
    太ももや手首などからカテーテルを静脈・動脈を通して心臓まで進めます。X線(レントゲン)や超音波を使いながら、冠動脈瘻の出口まで正確にカテーテルを誘導します。
  4. 閉鎖デバイスの設置
    瘻の形や大きさに合わせて、コイルやプラグなどの「閉鎖デバイス」をカテーテルの先端から瘻の出口に配置します。これにより、血液が“横道”に流れるのを防ぎます。
  5. 治療の確認と終了
    デバイスの設置後、心エコーや造影検査で血流が止まっていること、デバイスがしっかり固定されていることを確認します。問題がなければカテーテルを抜いて治療は終了です。

治療後の経過

治療後は数日間入院し、デバイスの位置や心臓の動きに問題がないかを慎重に観察します。特に合併症がなければ、数日で退院できます。治療後は定期的な心エコーやレントゲンなどの検査を行い、再発や新たな異常がないかを確認します。

カテーテル治療後は、多くのお子さんが普段通りの生活に戻ることができます。運動や学校生活についても、医師と相談しながら制限なく過ごせることが多いです。

カテーテル治療のメリットと注意点

メリット

  • 胸を切らずに済み、体への負担が小さい
  • 傷も小さく、回復が早い
  • 入院期間が短く、生活への影響が少ない
  • 将来的な合併症(心不全や感染症)の予防につながる

注意点

  • ごくまれにデバイスのずれ、血管の損傷、血栓、再発などが起こることがある
  • 定期的な外来受診と検査が必要
  • 瘻の形や場所によっては、外科手術が必要となる場合もある

ご家族へのメッセージ

冠動脈瘻のカテーテル治療は、今や多くのお子さんに安全に行われている治療法です。高度な医療技術と豊富な経験を持つ医療チームが、お子さんの将来の健康と成長のために最適な治療を選択・実施します。

不安なことや疑問があれば、どんなことでもご相談ください。ご家族とともに、お子さんの健やかな成長を全力でサポートします。

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