心房中隔欠損症(ASD)とは?
心房中隔欠損症(しんぼうちゅうかくけっそんしょう)は、心臓の右側と左側の「心房(しんぼう)」という部屋の間に、生まれつき小さな穴が空いている状態です。
赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいるとき、この壁に「卵円孔(らんえんこう)」という小さな穴があいていますが、通常は生まれたあとに自然に閉じます。しかし、何らかの理由でこの穴が残ったり、別の場所に新たな穴ができたりすると、「心房中隔欠損症」と診断されます。
この穴があることで、酸素をたくさん含んだ血液が右側の心房に流れ込み、本来の流れよりも多くの血液が肺に送られます。その結果、心臓や肺に余計な負担がかかり、成長とともに症状が現れることがあります。
症状や発見のきっかけ
心房中隔欠損症は、比較的症状が出にくい病気です。小さな穴の場合、乳幼児期はほとんど症状がないことが多く、健診や他の病気での検査で偶然見つかることもあります。しかし、穴が大きい場合や成長するにつれて、次のような症状が現れることがあります。
- 疲れやすい、息切れしやすい
- 風邪をひきやすい、肺炎を繰り返す
- 体重の増えがゆっくり
- 動悸を感じる
これらの症状が出た場合、早めの治療が必要となることがあります。
治療の必要性
心房中隔欠損症は、小さい穴の場合は経過観察のみで自然に閉じることもありますが、穴が大きい場合や症状が見られる場合は治療が推奨されます。
治療をせずに放置すると、大人になってから心臓や肺に負担がかかり、心不全や不整脈、肺高血圧など重い病気につながることがあるため、適切な時期に治療を行うことが大切です。
カテーテル治療とは?
カテーテル治療は、胸を開かずに細い管(カテーテル)を使って心房中隔欠損症の穴をふさぐ治療法です。カテーテル治療は体への負担が少なく、回復が早いことから、現在では多くの病院で標準的に行われています。
治療の流れ
- 事前検査と準備
治療を行う前に、心臓超音波検査(心エコー)、レントゲン、心電図、血液検査などを行い、穴の位置や大きさ、全身の健康状態を詳しく調べます。 - 治療当日
治療は全身麻酔または静脈麻酔下で行われます。お子さんが寝ている間に治療が進むので、痛みを感じることはほとんどありません。 - カテーテル挿入
太ももの付け根や首の血管から細い管(カテーテル)を心臓まで進めます。医師はモニターで血管や心臓の様子を確認しながら慎重に操作します。 - 閉鎖栓(デバイス)の設置
カテーテルを通して、穴をふさぐための専用の器具(閉鎖栓・デバイス)を心房中隔の穴の部分に運びます。この器具は傘のような形をしており、穴をしっかりとふさぐことができます。 - 治療の確認とカテーテルの抜去
心エコーやレントゲンでデバイスが正しい位置に設置されているか、しっかり穴がふさがっているかを確認し、問題がなければカテーテルを抜きます。
治療後の経過
治療後は、数時間から翌日まで入院して経過観察を行います。特に問題がなければ、数日で退院できます。治療の傷も小さく、体への負担はとても少ないため、多くのお子さんはすぐに日常生活に戻ることができます。
治療後は定期的に外来受診し、心臓の状態やデバイスの位置を心エコーなどで確認します。穴がしっかり閉じていれば、特別な運動制限などもなく、普通の生活を送ることができます。
カテーテル治療のメリット
- 胸を切る必要がないため、傷が小さく目立ちません
- 体への負担が少なく、回復が早い
- 入院期間が短く、学校や日常生活への復帰が早い
- 成功率が非常に高い
- 手術と比べて感染症や合併症のリスクが少ない
治療にあたってご家族へのメッセージ
心房中隔欠損症のカテーテル治療は、お子さんへの負担が少なく、安全性も高い治療法として確立されています。治療を受けることで、将来的な心臓や肺への負担を減らし、健康的な生活を送ることができます。
お子さんの成長や将来のためにも、気になることや不安なことがあれば、いつでも医療チームにご相談ください。ご家族の皆さまを全力でサポートいたします。