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小児心臓血管外科医の手術トレーニング

こんにちは。昭和医科大学病院 小児心臓血管外科の堀尾直裕です。
今回は、小児心臓外科医がどのようなトレーニングを積んで手術に臨んでいるのかについてご紹介します。

小児心臓外科の手術トレーニングとは?

小児の心臓手術は、一般の外科手術と比べても非常に時間がかかることが多い分野です。
まず、子どもの心臓は非常に小さく、また先天的な疾患によって一人ひとり形が異なります。
そのため、外科医は「小さな心臓がどのような構造になっているのか」「各疾患によって心臓がどう変化するのか」を徹底的に学ぶ必要があります。

本や資料での勉強はもちろんですが、実際に手術に臨む前に、どのような解剖構造になっているのかを深く理解することが最低条件となります。

細かい手技と身体のトレーニング

小児心臓外科手術では、ごく小さな部位を扱うため、非常に繊細な技術が求められます。
メスで切る、針で縫う、糸を結ぶ――それぞれの手技を、実際の場面でどう使い分けるかが非常に重要です。
成人の心臓外科では、血管の石灰化や動脈硬化などによる難しさもありますが、小児の場合は「小さい」ことと「構造が複雑で個別性が高い」ことが最大の難しさです。

また、子どもの心臓は大人より見た目がきれいで扱いやすいという側面もありますが、非常に脆く壊れやすいことも特徴です。成人と小児では、そもそものアプローチや手技のポイントが大きく異なります。

先天性心疾患のバリエーションと手術の難しさ

小児の心臓手術が必要となる代表的な疾患には、「心臓の中に穴があいている」「血管の位置が本来とは異なる」などがあります。
先天性心疾患では、解剖構造が正常と大きく異なることが多く、一人ひとり違う状態に合わせて手術プランを立てる必要があります。

シミュレーションモデルを用いた実践的なトレーニング

現在では、CT画像などから立体的な心臓モデルを作成し、シミュレーションを行うことが可能になっています。
若手医師はこの実際の患者さんの心臓に近いモデルを用いて、どのような手術を行うか、どのように血管を切って繋ぎ直すかなどを、指導医と一緒に練習します。

例えば「完全大血管転位症(TGA)」という疾患では、心臓から出る大きな血管(大動脈と肺動脈)の位置が入れ替わっているため、この血管を切り離して正しい位置に繋ぎ直すという、大変大掛かりな手術が必要です。
このような複雑な手術も、シミュレーションモデルで何度もトレーニングすることで、安全かつ確実な手術を実現しています。

手術に臨むまでの道のり

新生児に対する大きな手術は、原則として生後2週間以内に行われることも多く、すぐに若手医師が執刀できるものではありません。そのため、十分なシミュレーションと経験を積んだうえで、指導医の下で段階的に技術を高めていきます。

こうしたトレーニングが、最終的には患者さんにとってより良い手術結果につながります。

おわりに

私たち小児心臓外科医は、日々技術を磨き、患者さん一人ひとりに最適な手術を提供できるよう努力しています。
もし小児の心臓手術についてご不明な点やご不安なことがあれば、いつでも昭和医科大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センターへご相談ください。

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