こんにちは。昭和大学医科病院 小児心臓血管外科 診療科長の宮原です。
本日は、小児心臓血管外科についてお話しさせていただきます。
小児心臓血管外科とは?
一般的には、心臓血管外科の一部門として小児心臓血管外科が設けられていることが多いのですが、大学病院では「小児心臓血管外科」は独立した専門分野として確立されています。
正確には、生まれつきの心臓病を治療する専門家であり、必ずしも「お子さんだけ」を対象にしているわけではありません。ですので、“こども病院の心臓血管外科”ともまた少し違った特徴を持っています。
当科では、新生児から高齢者まで、すべての年齢層の方に対して手術治療を提供しています。一つの病院内に、そのための診療科・人材・設備(ハード)・仕組み(ソフト)がすべて揃っていることが、当院の大きな特徴です。
「自分の家族だったら」と考える医療
私のモットーは、「この子が自分の家族だったらどうするか」という視点を持つことです。常にそう考えながら診療にあたっています。
可能な限り患者さんへの負担が少ない方法、つまり内科的治療やカテーテル治療を最優先します。それでも治らない、どうしても外科手術が必要だという場合に初めて、外科的治療を選択するようにしています。
その際には、内科の先生とよく話し合い、外科医が独りよがりな判断をしないよう、チームで慎重に検討しています。
結果にこだわる心臓外科医として
私が考える心臓外科医のあり方は、「結果が全て」ということです。
今の時代、手術で患者さんが亡くなることはほとんどありません。ですから、どれだけ“きれいに治すか”、“どれだけ良い機能で治すか”ということが非常に大切です。
内科の先生方が「宮原に任せたい」と思ってくださるからこそ、私たちは手術ができる。その期待に応える結果を出すことで、最終的に子どもたちの幸せにつながると信じています。
小児心臓外科の責任とやりがい
小児心臓外科は、成人の心臓外科とはまた違った責任とやりがいがあります。特に小さなお子さん、赤ちゃんの手術をする場合、うまくいけばこれから70年、80年という長い人生が待っています。
成人になれば、寿命をさらに10年、20年延ばす可能性も生まれます。そのため、患者さんご本人だけでなく、ご両親やご家族全員の期待や思いを背負いながら手術を行うのが小児心臓外科医の役割だと考えています。
小児心臓外科の難しさと魅力
誤解を恐れずに言えば、小児心臓外科、特に先天性心臓外科は非常に難しい手術分野だと思っています。これは、単に「小さいから難しい」というだけではありません。
疾患そのものの理解、循環動態(血液の流れや心臓の働き方)の理解、病気の種類が非常に多いこと、そして「これをやれば必ず治る」という決まった筋道が存在しない点が、小児心臓外科の特徴であり難しさです。
成人の心臓手術、たとえばバイパス手術では、より細かい血管を扱うこともあります。一方、小児の心臓手術は赤ちゃんの小さな心臓そのものを「再構築」する、いわば心臓の“形成外科”のような一面も持っています。
最後に
小児心臓血管外科は、患者さんご本人だけでなく、ご家族みんなの人生や期待に寄り添いながら、最善の医療を提供することが求められる分野です。
私たちは一人ひとりの患者さんにとって「自分の家族だったらどうするか」という想いを大切にし、これからも最高の医療を提供し続けたいと思います。