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【心房中隔欠損】徹底解説

こんにちは。昭和医科大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センターの藤井隆成です。
本日は、「心房中隔欠損症」について詳しくご説明いたします。

心房中隔欠損症とは

心房中隔欠損症は、先天性心疾患の中で最も多い疾患の一つです。

心臓には4つの部屋がありますが、そのうち上部に位置する2つの部屋――右心房と左心房――の間を仕切る壁(心房中隔)に、生まれつき穴(欠損)が空いている状態を指します。

この穴があることで、通常は発生しない余分な血液の流れが生じ、結果として心臓に負担がかかり、様々な症状が現れるようになります。

赤ちゃんの心臓の特徴と診断のタイミング

実は、お母さんのお腹の中にいる胎児の段階では、誰でもこの心房中隔に穴が空いています。これは胎児期には正常な状態で、出生後、通常の赤ちゃんの場合は数か月から半年ほどで自然に小さくなり、やがて塞がっていきます。

しかし、心房中隔欠損症のあるお子さんの場合、この穴が通常より大きく、生後半年から1年経っても塞がらずに残ることが特徴です。ほとんどの場合、胎児期には異常が指摘されず、産後に見つかることが多い疾患です。

症状が現れる時期

心房中隔欠損症は生まれつきの心臓病ですが、乳幼児期は症状が目立たない場合が多いです。

ところが、治療せずに成長すると、大人になってから不整脈(心臓のリズムの乱れ)や心不全(息切れや動悸、強い疲労感など)といった症状が現れることがあります。

大人になるまで症状が出ないことも珍しくなく、気付かずに過ごしてしまい、後から重い症状として現れるケースも少なくありません。

治療のタイミングと方法

心房中隔欠損症は、「穴の大きさ」や「心臓への負担度」によって、治療のタイミングが決まります。病院で検査を受け、その結果に基づいて「どの時期に治療するのが最適か」をご相談しながら決定します。

カテーテル治療

治療の主流はカテーテル治療です。足の付け根の血管から細い管(カテーテル)を心臓まで通し、欠損部分を塞ぐための閉鎖栓という器具を挿入して穴をふさぎます。

日本では2006年から導入され、徐々に普及が進み、今では患者さんの約半数以上がカテーテル治療で治療を受けています。当院では約85%の患者さんがこの治療を選択されています。

カテーテル治療では、現在国内で3種類の閉鎖栓が使われており、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。穴の大きさや位置、患者さんの体格などにより最適な器具を選び、オーダーメイドの治療を行っています。

この治療は身体への負担が非常に少なく、胸に傷がつかず、手術当日に歩けるようになる場合も多く、入院期間も短く済みます。ただし、穴の大きさや位置によってはカテーテル治療が適さない場合もあります。

外科手術

カテーテル治療が難しい場合や、穴が大きい場合などは外科手術が選択されます。

胸を開けて心臓の穴を直接閉じる方法で、安全性が高く、どんな形や大きさの穴でも確実に閉鎖できることが大きなメリットです。

近年は、傷跡が目立たない手術法や、体への負担がより少ない術式も発展しており、患者さんの希望や年齢、状態に合わせて最適な方法を提案しています。

治療後の経過と生活

カテーテル治療でも外科手術でも、心房中隔欠損症は一度の治療でほとんどの方が安全に完治します。

治療後は定期的なチェックが必要ですが、日常生活に特別な制限はなく、普段通りの生活が可能です。再治療が必要になることもほとんどありません。

おわりに - 迷わずご相談ください

心房中隔欠損症は生まれつきの心臓病ですが、現代では治療法が確立されており、治療成績も非常に良好です。患者さん一人ひとりに合わせて最適な治療時期や治療法を検討し、確実な治療を提供しています。

「治療後は普通の生活ができるのか」と不安を感じている方も多いと思いますが、適切な時期に治療を受けていただければ、普段通りの生活を送ることができます。

気になる症状やご不安、ご相談があれば、ぜひ昭和医科大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センターまでご相談ください。

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