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小児のファロー四徴症について

こんにちは。昭和医科大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センターの藤井 隆成です。
本日は、小児のファロー四徴症についてご説明いたします。

ファロー四徴症とは──手術とその後の生活について

先天性心疾患「ファロー四徴症」とは?

ファロー四徴症は、生まれつき心臓に構造的な異常がある先天性心疾患のひとつです。以下の4つの要素が組み合わさって起こるため「四徴症」と呼ばれます。

  1. 心室中隔欠損(右心室と左心室の間に穴が開いている)

  2. 肺動脈狭窄(右心室から肺へ血液を送る通路が狭い)

  3. 大動脈騎乗(大動脈が左右の心室の両方にまたがっている)

  4. 右心室肥大(右心室の筋肉が厚くなる)

特に重要なのが、肺に血液を送る道が狭いことと、心室の壁に穴が空いていることで、酸素の少ない「青い血液」が全身に流れてしまう点です。これにより皮膚が青紫色に変色する「チアノーゼ」が主な症状として現れます。


ファロー四徴症の診断はいつ行われるの?

近年では胎児期の心臓超音波(胎児エコー)検査により、生まれる前にファロー四徴症が診断されるケースが増えています。当院でも、重症な患者さんの多くは出生前に診断がつき、生まれた直後から適切な管理や治療が進められています。


治療の基本は外科手術

ファロー四徴症の根本的な治療は、心臓の構造を正常に近づける外科手術です。

  • 心室中隔欠損の閉鎖(心室の穴をふさぐ)

  • 肺動脈狭窄の拡張(血流の通り道を広げる)

これらの手術により、正常な血液の流れに近づけていきます。


手術のタイミングと回数は個人差あり

治療の内容や時期は患者さんの状態によって異なります。心臓の構造や肺動脈の狭さによって、1回の手術で完了する場合と、2段階に分けて行う必要がある場合があります。

特に、肺動脈が非常に狭い場合には、新生児期に**シャント手術(バイパスを作って血流を確保する手術)**を行い、体が大きくなってから本格的な修復手術を行うこともあります。目安としては、体重5〜6kg程度になる頃が多いですが、個別に判断されます。


手術後の生活は?

多くの患者さんは、手術後にほぼ普通の生活を送れるようになります。

  • 小学校に入れば、体育の授業にも参加できるお子さんがほとんどです。

  • 成長・発達への影響も、一般的にはごくわずかです。


手術後の経過観察も大切です

手術を終えたあとも、10年、20年、30年後に追加の治療が必要となることがあります。たとえば:

主な追加治療の理由:

  • 不整脈:心拍のリズムが乱れることで、動悸や失神につながることがあります。

  • 肺動脈弁の逆流(閉鎖不全):時間が経つにつれて弁の機能が悪くなり、心臓に負担がかかるケースもあります。

症状がなくても、逆流や不整脈が進行している場合は、定期的な心エコーや心電図のチェックが必要です。


大人になってからの治療:カテーテル治療の進歩

以前は、弁を交換するために胸を開ける外科手術(肺動脈弁置換術)が主流でしたが、近年ではカテーテル治療で人工弁を留置する方法も行えるようになってきました。

このように、治療法は日々進歩しており、適切なタイミングで対応することで、成人後も健康に過ごすことが可能です。


最後に:ご家族・成人患者さんへのメッセージ

ファロー四徴症は決して珍しい病気ではなく、治療法も確立されてきています。ご不安を抱える方も多いかと思いますが、まずはしっかりと診断と説明を受け、前向きに治療に向き合っていただければと思います。

また、かつてファロー四徴症の手術を受けたご本人も、ぜひ症状がなくても半年~1年に1回は定期的な診察を受けてください。将来の健康を守るためにとても大切なことです。

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