こんにちは。昭和医科大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センターの喜瀬 広亮です。
本日は、小児の心室中隔欠損についてご説明いたします。
心室中隔欠損症とは?──よくある先天性心疾患について
心室中隔欠損症とは
心室中隔欠損症とは、心臓の下部にある左右の心室を隔てる壁(心室中隔)に穴が開いている状態を指します。正常であれば分かれているはずの左右の心室がつながってしまうことで、本来流れるべき方向とは異なる方向に血液が流れ、体や肺に影響を及ぼすことになります。
通常、左心室には体に送り出される酸素豊富な「赤い血液」が、右心室には体から戻ってきた酸素の少ない「黒い血液」が流れています。心室中隔に穴があると、赤い血液が右心室に逃げてしまい、そのまま肺に過剰に流れることで、肺に負担がかかってしまいます。
頻度の高い先天性心疾患
心室中隔欠損症は、実はそれほど珍しい病気ではありません。先天性心疾患の中でも最も頻度が高く、全体の20〜30%を占めるとされています。
症状と影響
心室中隔欠損があると、本来体に送られるはずの血液が肺に流れてしまうため、全身に行き渡る血液量が不足してしまいます。その結果として、
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呼吸が苦しくなる
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哺乳力の低下
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体重増加不良
といった症状が現れやすくなります。特に穴が大きい場合、肺に過剰な血液が流れ続けることで「肺高血圧」などの合併症を引き起こすことがあります。
治療は手術が基本
現在のところ、心室中隔欠損症の根本的な治療は外科手術によって穴を塞ぐ方法しかありません。体重が十分で、他の臓器に問題がなければ、早期の手術が望ましいとされています。
ただし、手術のタイミングは患者さんの状態によって変わります。例えば、体重が極端に少ない場合や他の臓器に問題がある場合は、手術を一時的に見送ることもあります。
自然閉鎖するケースも
すべての心室中隔欠損が手術を必要とするわけではありません。穴が小さい場合には自然に閉じることもあり、中程度の大きさでも心臓への負担が少ない場合には、利尿剤などを使いながら経過観察を行うこともあります。
一方で、哺乳不良や体重増加不良が目立つ、また肺高血圧があるといった場合には、早期の手術が推奨されます。
手術後の経過と将来
手術によって心室中隔欠損を修復した後は、ほとんどの患者さんが健康な生活を送ることができます。体重も順調に増え、成長や発達にもほとんど問題はありません。学校生活はもちろん、成人後もほとんどの場合、心室中隔欠損があったことでの不都合は生じません。
最後に──ご家族の皆さまへ
「心臓に穴が開いている」と聞くと、とても驚かれる方が多いかと思います。しかし、心室中隔欠損症は非常に一般的な病気であり、適切な時期に適切な治療を受ければ、健康に生活していくことができます。
どんな病気なのか、どのような治療が行われるのか、そしてその後の生活について、医師に遠慮なくご相談ください。ご家族が安心して治療を受けられるよう、私たち医療スタッフがしっかりとサポートいたします。