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【動脈管開存】徹底解説

こんにちは。昭和医科大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センターの藤井隆成です。
今回は「動脈管開存症」について、皆さまに分かりやすくご説明します。

動脈管とは? 胎児期と生後の違い

まず、動脈管とは、大動脈と肺動脈をつないでいる血管のことです。お母さんのおなかの中にいる胎児の間は、誰でもこの動脈管が開いている状態が正常です。胎児は肺を使って呼吸していないため、動脈管を通して血液がショートカットできる仕組みになっています。

しかし、赤ちゃんが生まれて自分の肺で呼吸するようになると、この動脈管はもう必要ありません。
そのため、通常は生後1~2日で自然に細くなり、やがて閉じて消失します。

動脈管開存症とは?

動脈管開存症とは、本来なら生後すぐに閉じるはずの動脈管が閉じず、開いたまま残ってしまう状態のことを指します。

開存した動脈管の太さや大きさによって、症状や治療の必要性が大きく変わってきます。

症状や発見されるタイミング

動脈管が太く、開いたままの場合は、生後まもなくから心臓に大きな負担がかかります。早ければ生後1~2週間で心不全の症状が現れることもあります。

赤ちゃんの場合、心不全が進むと呼吸が荒くなったり、ミルクやおっぱいを十分に飲めなくなり、体重が増えにくくなります。すぐに疲れてしまったり、体重増加が不良となることもあります。

動脈管がそれほど太くない場合、本人には目立った症状が出ないことも多いですが、乳幼児健診や学校健診で、胸の音に心雑音(本来聞こえない音)が混じっていることで発見されるケースもあります。大人になってから健康診断で偶然見つかることもあります。

治療の必要性と判断

太い動脈管が開いたままの場合は、赤ちゃんのうちから成長に支障が出るため、早期の治療が必要です。聴診で心雑音がはっきり聞こえる場合や、超音波検査で心臓の負担が確認された場合も、比較的早めの治療をおすすめします。

一方、非常に細い動脈管で、心臓への負担がほとんどない場合は、治療をせず経過観察となることもあります。つまり、患者さんごとに症状や検査結果をもとに、最適な治療方針を一緒に考えていきます。

カテーテル治療について

動脈管開存症の治療は、カテーテル治療が主流です。ほとんどの患者さんが、足の付け根などから細い管(カテーテル)を入れ、動脈管の開いた部分に器具を留置して閉じる治療を受けています。

現在日本国内で使える治療器具は3種類あり、患者さんの体格や動脈管の大きさ・形に合わせて最適なものを選択しています。カテーテル治療は体への負担が少なく、多くの場合は短い入院期間で済みます。

外科手術が必要な場合

ごく太い動脈管や、患者さんの体格が非常に小さい場合など、カテーテル治療が難しいケースもあります。

その際は、胸を開けて直接動脈管を閉じる外科手術をおすすめすることになります。傷跡も最小限になるよう配慮し、安全に治療を行っています。

早産児の動脈管開存症

早産で生まれた赤ちゃんは、動脈管が開いたままになりやすいという特徴があります。

体重700g以上の早産児であれば、現在はカテーテル治療が可能です。治療器具や技術の進歩により、手術が必要なケースは少なくなっています。

治療後の経過と日常生活

動脈管開存症の治療成績は非常に良好です。一度カテーテル治療や手術を行えば、基本的に再治療は必要なく、普段通りの生活を送ることができます。

まとめ・受診を迷っている方へ

動脈管開存症と診断された場合は、年齢や体格によって治療方法やタイミングが異なります。

現在はカテーテル治療が可能で、安全性も高いので、まずは昭和医科大学病院などの専門医療機関を受診し、検査を受けてください。

検査の結果に応じて、治療の必要性や最適な治療時期をご案内します。細い動脈管で負担がない場合には、治療しない選択肢もありますので、ご安心ください。

治療が必要な場合でも、安全にしっかりと対応できますので、不安を感じることなくご相談いただければと思います。

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