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小児の心臓腫瘍について

―お子さまの「心臓にできる腫瘍」の解説―

1. 心臓腫瘍とは

心臓腫瘍(しんぞうしゅよう)は、心臓の中にできる「しこり」や「できもの」のことを指します。腫瘍と聞くと「がん」を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、子どもの心臓腫瘍の多くは「良性(りょうせい)」といって、がんのように体の他の部分に転移したり、命に直結したりするものではないことがほとんどです。

2. どんな種類があるの?

小児の心臓腫瘍には、いくつかの種類があります。大人の心臓腫瘍と比べると、発生の仕方や種類が異なります。

小児でよく見られる心臓腫瘍

  1. 心筋腫(しんきんしゅ)
    • もっとも多いタイプ
    • ほとんどが「良性腫瘍」で、乳児や胎児のうちに見つかることが多い
    • しばしば自然に小さくなったり消えていく
  2. 線維腫(せんいしゅ)
    • 心臓の筋肉や壁にできる
    • 比較的しっかりとした硬さの腫瘍
  3. 血管腫(けっかんしゅ)
    • 血管が集まってできる腫瘍
  4. 粘液腫(ねんえきしゅ)
    • 大人に多いが、子どもでもまれに見られる
    • 心臓の中の弁や壁からぶら下がることがある
  5. 悪性腫瘍(サルコーマ、リンパ腫など)
    • 子どもでは非常にまれ
    • 他のがんが心臓に転移することもまれにある

3. なぜ起こるの?

心臓腫瘍の多くは、生まれつき(先天性)にできるものです。
原因がはっきりしないことも多いですが、ご両親の生活や妊娠中の過ごし方が直接の原因になることはありません。
一部の心筋腫は「結節性硬化症(けっせつせいこうかしょう)」という遺伝性の病気と関係している場合もあります。

4. どんな症状が出るの?

腫瘍の大きさできた場所によって症状はさまざまです。

主な症状

  • 無症状(症状がまったくない)
    • 健診や検査のとき、偶然に見つかることが多い
  • 心雑音
    • 聴診器で心臓の音を聞いたとき、異常な音がする
  • 不整脈(脈が乱れる)
    • 動悸、脈が飛ぶ、意識を失うことがある
  • 心不全症状
    • 息切れ、疲れやすい、むくみ、体重が増えない、ミルクの飲みが悪い
  • 失神やけいれん
    • 腫瘍が心臓の中の血流を妨げたり、脳への血液が一時的に減ったりすることで起こる
  • 突然死(極めてまれ)
    • 血流が完全に遮られたり、重い不整脈が出ることで起こる

小さな腫瘍や心臓の壁にできたものは無症状で一生気づかれない場合もあります。

5. どうやって診断するの?

心臓腫瘍の診断は、主に画像検査を使います。

主な検査

  • 心臓超音波検査(心エコー)
    • 心臓の動きや中の様子をリアルタイムで観察
    • 腫瘍の大きさ・位置・数を調べることができる
  • 心電図
    • 不整脈の有無や、心臓への負担をチェック
  • 胸部レントゲン
    • 心臓の大きさや形の異常を確認
  • MRI・CT検査
    • 腫瘍の詳細な性質や心臓以外への広がりを調べる
  • 血液検査
    • 全身の健康状態、腫瘍による異常がないかを調べる
  • 心筋生検(きんせいけん)
    • 必要に応じて、腫瘍の一部をとって詳しく調べる

6. どんな治療をするの?

治療法は腫瘍の種類・大きさ・場所・症状の有無によって異なります。

治療が必要ない場合

  • 小さくて症状がない場合は、定期的に経過観察(定期検査で大きさや変化を確認)
  • 多くの心筋腫は自然に小さくなったり、消えることもあるので慎重に様子を見る

治療が必要な場合

  • 腫瘍が大きい、心臓の血流を妨げる、不整脈や心不全の原因となっている場合は「手術」で腫瘍を取り除くことが検討されます
  • 手術の難易度やリスクは、腫瘍の場所や大きさによって大きく異なります
  • 複数の腫瘍や、取りきれない場合は症状やリスクに応じて追加治療や管理を行います

悪性腫瘍の場合

  • 非常にまれですが、化学療法(抗がん剤)や放射線治療、手術などを組み合わせて治療します
  • 専門施設での集中的な治療・管理が必要です

7. 日常生活で気をつけること

  • 無症状で経過観察中のお子さんは、主治医の指示があれば通常の学校生活や運動も可能です
  • 発熱、ぐったり、動悸や失神など新たな症状があればすぐ受診
  • 定期的な通院・検査で腫瘍の大きさや変化をチェックする
  • 手術や治療を受けた後は、体調や体力の回復をみながら少しずつ普段の生活に戻します
  • 激しい運動やコンタクトスポーツは主治医とよく相談してから行いましょう

8. 予後と合併症について

予後(治りやすさ)

  • 良性腫瘍の多くは、自然に小さくなったり、問題なく一生を過ごせることが多いです
  • 手術が必要な場合も、適切な治療で元気に過ごせる子どもがほとんどです
  • 悪性腫瘍の場合や複雑な症例は、長期にわたる治療・管理が必要になることがあります

合併症

  • 術後に不整脈や心機能の低下が出ることもあるので、経過観察が大切
  • 結節性硬化症など、全身的な病気を合併している場合は、他の臓器の管理も必要です

9. ご家族へのメッセージ

お子さんが「心臓腫瘍」と診断されると、初めて聞く病名や治療・経過観察の説明に驚きや不安、戸惑いを感じるのは当然のことです。
しかし、現代の医療では多くの子どもが元気に成長し、普通の学校生活や社会生活に参加しています。

疑問や不安はどんな小さなことでも、主治医や看護師、医療スタッフに相談してください。
ご家族で支え合いながら、お子さんの健康と未来を一緒に見守っていきましょう。

10. まとめ

  • 小児の心臓腫瘍は多くが良性で、自然に小さくなるものもある
  • 症状がなければ経過観察、症状やリスクがあれば手術など治療を検討
  • 定期的な通院・検査が大切
  • ご家族と医療スタッフが連携し、お子さんの健やかな成長を支えましょう

 

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