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経皮的肺動脈弁置換術(TPVI)とは?

経皮的肺動脈弁置換術(TPVI:Transcatheter Pulmonary Valve Implantation)は、心臓の右側にある「肺動脈弁(はいどうみゃくべん)」が悪くなったときに、カテーテルという細い管を使って新しい弁を心臓の中に入れて設置する治療法です。

胸を大きく切って行う心臓手術とは異なり、体への負担がとても少ない「低侵襲(ていしんしゅう)」な方法として、近年注目されています。

肺動脈弁の役割と、なぜ治療が必要なのか

肺動脈弁は、心臓から肺へ血液を送り出す“門”の役割をしています。この弁が傷んだり、狭くなったり、逆流するようになると、心臓や肺に余計な負担がかかってしまい、息切れ・疲れやすさ・動悸・むくみなどの症状が出ることがあります。

特に、先天性心疾患(生まれつきの心臓病)で肺動脈弁の手術を受けたことのあるお子さんは、成長とともに以前入れた弁が劣化したり、弁がしっかり機能しなくなることがあります。そのため、再治療が必要になることが少なくありません。

経皮的肺動脈弁置換術(TPVI)の特徴

従来、傷んだ肺動脈弁の治療は、再び胸を開ける「開胸手術」が必要でした。しかし、TPVIはカテーテルを使って新しい人工弁を心臓の中に運び、直接設置することができるので、体への負担が大きく減ります。

主な特徴

  • 胸を切る必要がなく、傷は足の付け根などに小さく残るだけ
  • 入院期間が短く、治療後の回復も早い
  • 治療に伴う痛みや出血などのリスクが少ない
  • 日常生活や学校への復帰が早い

治療の流れ

  1. 事前検査と準備
    心エコー(超音波検査)、心臓カテーテル検査、CT検査、MRI検査などで、心臓や血管の状態、新しい弁を設置できるかどうかを詳しく調べます。全身の健康状態も確認します。
  2. 治療当日
    治療は、全身麻酔または静脈麻酔下で行います。お子さんは眠っている間に治療が進みます。
  3. カテーテルの挿入
    足の付け根(大腿静脈)や首の静脈から細いカテーテルを心臓まで進めます。カテーテルの先端には、新しい肺動脈弁がたたまれて装着されています。
  4. 新しい弁の設置
    X線(レントゲン)や心エコーを見ながら、正しい位置までカテーテルを進め、新しい弁を肺動脈弁の場所で開いて設置します。バルーンでふくらませてしっかり固定します。
  5. 治療後の確認とカテーテルの抜去
    弁が正しく機能しているかを丁寧に確認した後、カテーテルを抜いて治療は終了です。

治療後の経過

治療が終わった後は、病室や集中治療室で数時間から一日程度、しっかりと経過を観察します。特に問題がなければ、数日以内に退院できることがほとんどです。

治療後は、心臓の動きや新しい弁の状態を確認するため、定期的に通院して心エコーや診察を受けます。新しい弁は、しっかりと機能すれば、普段どおりの生活や運動も可能です。

どんなお子さんがTPVIの対象になるのか

TPVIは、すべてのお子さんに適応できるわけではありません。

肺動脈弁の大きさや心臓の形、これまでの治療歴、体の大きさなど、さまざまな条件を総合的に判断して決定します。適応が難しい場合は、これまで通りの外科手術が必要になることもあります。

治療のメリットと注意点

メリット

  • 胸を切らずに治療ができるため、体への負担が非常に少ない
  • 傷が小さく、回復が早い
  • 短期間で学校や日常生活に戻れる
  • 再手術の回数を減らすことができる

注意点

  • まれに弁のずれや血管の損傷などの合併症が起こることがある
  • 長期的な観察が必要で、人工弁の耐用年数には限りがあるため、将来的に再治療が必要になる場合がある

ご家族へのメッセージ

経皮的肺動脈弁置換術(TPVI)は、これまで何度も大きな手術を経験してきたお子さんにも、より負担の少ない新しい治療の選択肢となります。高度な専門的チームが最新の医療技術を用いて、安全に治療を行っています。

不安なことや疑問は、どんな些細なことでも医療スタッフにご相談ください。お子さんとご家族が安心して治療を受けられるよう、心を込めてサポートします。

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