総肺静脈還流異常症はどう治す?子どもへ行う治療のポイント|専門医が徹底解説
昭和医科大学病院
小児循環器・成人先天性心疾患センター
矢内 俊
総肺静脈還流異常症はどう治す?
子どもへ行う治療のポイント|専門医が徹底解説
「総肺静脈還流異常症(そうはいじょうみゃくかんりゅういじょうしょう)」は、生まれてすぐに治療が必要になることが多い先天性心疾患のひとつです。
診断から治療までが非常に速いスピードで進むこともあり、ご家族にとっては大きな不安を伴う病気でもあります。
今回は、総肺静脈還流異常症について、病気の仕組みと治療のポイントをわかりやすく解説します。
総肺静脈還流異常症とは?
通常、肺で酸素を取り込んだ血液は「肺静脈」を通って心臓の左心房に戻り、そこから全身へ送られます。
しかし総肺静脈還流異常症では、肺静脈が左心房につながらず、別の静脈や心房に戻ってしまう状態になっています。
そのため、酸素を多く含んだ血液が効率よく全身に送られません。
この病気は、およそ1万人に1人の頻度でみられるとされています。
血液の流れをおさらい
体で使われた酸素の少ない血液は心臓の右側に戻り、肺へ送られます。
肺で酸素を取り込んだ血液は、本来であれば肺静脈を通って左心房に戻り、左心室から大動脈を通じて全身へ送られます。
総肺静脈還流異常症では、この**「肺静脈から左心房へ戻る」という重要な経路が成り立っていません**。
病気のタイプについて
総肺静脈還流異常症は、肺静脈がどこにつながっているかによって、いくつかのタイプに分かれます。
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心臓の近くにつながるタイプ
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大きな静脈につながるタイプ
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心臓から離れた静脈につながるタイプ
また、血液の通り道が狭くなっているかどうかによって、症状の重さや緊急性が変わります。
どんな症状で見つかる?
近年では、胎児期に診断されるケースも多くなっています。
一方で、生まれるまで診断がつかず、
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皮膚や唇が青く見える(チアノーゼ)
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酸素の値がなかなか上がらない
といった症状をきっかけに見つかることもあります。
総肺静脈還流異常症は、基本的に生後早期に手術が必要になる病気です。
チアノーゼがみられた場合は、心臓手術が可能な医療機関へ速やかに紹介されることが多くなります。
治療は手術が中心です
現在のところ、総肺静脈還流異常症に対しては、手術以外で根本的に治す方法はありません。
手術では、肺静脈から戻ってきた血液が左心房へ正しく流れるように、新しい通り道を作ります。
これにより、心臓や肺にかかっていた負担が徐々に軽くなり、酸素の値も改善していきます。
手術後に注意が必要な点
手術後は循環が安定することが多い一方で、
**肺静脈が再び狭くなる「肺静脈狭窄」**が起こることがあります。
これは手術後数か月以内に生じることがあり、一定の割合でみられるとされています。
そのため、退院後も定期的に外来で診察を受け、肺静脈の状態を確認していくことが重要です。
治療までの流れが急な病気だからこそ
総肺静脈還流異常症は、
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診断
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手術の説明
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手術
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ICU入室
までが短期間で進むことも少なくありません。
医療者にとっては日常的な流れであっても、ご家族にとっては突然の出来事の連続です。
私たちは、その不安な気持ちに寄り添いながら、できる限り丁寧に説明と診療を行っています。
気になることがあればご相談ください
総肺静脈還流異常症に限らず、
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先天性心疾患と診断された
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健診で心雑音を指摘された
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「様子を見ましょう」と言われたが不安が残る
といった場合でも、気になることがあれば受診をご検討ください。
お子さんとご家族が安心して治療に臨めるよう、チームでサポートしていきます。
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