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胎児心エコー 徹底解説

【専門医がわかりやすく解説】胎児心エコーとは?妊娠中に赤ちゃんの心臓を調べる大切な理由

昭和医科大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センター
清水 武

 

妊娠中の健診で「赤ちゃんの心臓に気になる点があり、精密検査が必要です」と言われると、多くの方が強い不安を抱えます。
心臓は赤ちゃんの命を支える大切な臓器であるため、少しの指摘でも心配になるのは当然です。

そのような時に行う検査が「胎児心エコー」。
当院では、胎児期から先天性心疾患を精密に診断し、出生後の治療まで一貫してサポートできる体制を整えています。

この記事では、胎児心エコーがどのような検査なのか、そしてなぜ妊娠中に心臓の状態を詳しく知ることが赤ちゃんの“命を守ること”につながるのかを、専門医の視点から丁寧に解説します。


■ 胎児心エコーとは?妊娠中に赤ちゃんの心臓の構造を詳しく調べる検査

胎児心エコーは、超音波を使ってお腹の中の赤ちゃんの心臓を立体的に評価する検査です。
一般的な妊婦健診で行われる「胎児エコー」とは異なり、心臓の形・働き・血液の流れ方まで詳細に確認することができます。

通常の妊婦健診の段階では、

  • 心臓の4つの部屋があるか

  • 2本の大血管が正しく位置しているか
    といった“ざっくりとしたチェック(スクリーニング)”が中心です。

一方で胎児心エコーは、

  • 心室中隔の状態

  • 弁の動き

  • 血流方向や速度

  • 大血管の走行異常
    などを細かく観察し、先天性心疾患の有無を可能な限り正確に診断することが目的です。

超音波は胎児に害がないため、安心して受けられる検査です。


■ 胎児心エコーはいつ行われる?

心臓の評価に最も適しているのは、妊娠中期(18〜22週ごろ)から後期にかけてです。
この時期は赤ちゃんの心臓が十分な大きさになり、構造がはっきり見えやすくなります。

妊婦健診でスクリーニングを行った結果、

  • 部屋の数に不整合がある

  • 血管の位置が定位置ではない

  • 血流パターンに疑いがある
    などの所見が見られた場合、胎児心エコーを受ける流れになります。


■ なぜ“胎児期”に心臓の状態を知る必要があるのか

先天性心疾患の中には、出生直後に治療や手術を必要とする疾患が存在します。

もし診断がないまま出産を迎えると、

  • 生まれてすぐに赤ちゃんの状態が急変する

  • 手術ができる施設への搬送が遅れる

  • 病院間の連携が整わず治療開始が遅れる

といったリスクがあり、赤ちゃんの体への負担が大きくなります。

一方で、出生前に診断がついていれば、

  • どの病院で出産すべきか

  • 生まれた直後にどの処置を行うか

  • 手術のタイミングをどうするか

といった治療計画を産科・小児循環器・新生児科が連携して立てることができます。

つまり胎児心エコーは、
赤ちゃんの命をより安全に守るための“準備”を妊娠中から始めるための検査なのです。


■ 「精密検査が必要」と言われても過度に不安になる必要はありません

「心臓に異常の疑いがあります」と聞くと、大きなショックを受ける方も多く、来院された時には精神的に負担を抱えている妊婦さんも少なくありません。

しかし、スクリーニングはあくまで
“異常があるかもしれない”という入り口の検査であり、
実際には大きな問題がないケースも多くあります。

スクリーニングだけでは、

  • 軽度の疾患

  • 治療の必要性

  • 出生直後の対応の可否

までは分かりません。
正確な診断のためには専門医による胎児心エコーが必要です。

ですので、まずは落ち着いて専門医の診察を受けることが大切です。


■ どの病院でも受けられる検査ではない ― 専門施設での診断が重要

胎児心エコーは高度な技術と経験が求められる検査であり、すべての医療機関で実施できるわけではありません。
日本には胎児心臓病学会が認定した施設があり、当院もそのひとつです。

認定施設には、胎児心エコーの専門トレーニングを受けた医師が在籍し、精密な診断を行っています。

昭和医科大学病院には
胎児心エコー認定医が4名在籍
胎児期の評価から出生後の治療まで一貫したフォローが可能です。


■ 胎児期に見つかる主な心疾患の種類

先天性心疾患は100人に1人の確率で発生するとされる、比較的頻度の高い病気です。

胎児期に見つかるものは、比較的“重症度の高い”異常であることが多く、例としては:

  • 心室がひとつしかない

  • 大動脈・肺動脈がひとつしかない

  • 血液が逆方向に流れている(逆流現象)

といった心臓の基本構造の異常です。

これらは出生後に手術や集中治療が必要になることもありますが、どの疾患も治療法が飛躍的に発達しています。


■ 先天性心疾患の赤ちゃんは元気に育てる?

医療の進歩により、先天性心疾患はかつてと比べて大きく状況が変わっています。

  • 新生児期から手術が可能

  • カテーテル治療の発展

  • 集中治療室(NICU)の整備

  • 成人先天性心疾患専門医療の確立

これらにより、9割以上の患者さんが成人期まで成長する時代になりました。

小児期に手術や治療を受け、その後も専門医のフォローを続けていくことで、多くの方が通常の生活を送ることが可能です。

当院は「赤ちゃん → 小児 → 成人」まで一貫して診療できる体制を整えているため、長期的なフォローも安心してお任せいただけます。


■ 昭和医科大学病院の強み ― 途切れない“母子医療と循環器医療の連携”

当院には、胎児から成人まで心疾患を支えるための複数のセンターが連携し、包括的な診療体制を構築しています。

  • 総合周産期母子医療センター

  • 小児医療センター

  • 小児循環器・成人先天性心疾患センター

妊娠中の診断、出生直後の対応、小児期の治療、成人後のフォローアップまでを院内でワンストップ提供できます。

また胎児心エコー認定医が複数在籍し、専門性の高い診断体制を備えている点も大きな強みです。


■ 産婦人科との緊密な連携で“最適な出産”をサポート

胎児心疾患の診断には、産婦人科と小児循環器の両方の視点が重要です。
当院では、

  • 産科医が胎児の全身機能を評価

  • 小児循環器医が心臓の専門的評価を担当

両者がカンファレンスを重ね、出産までの経過と治療計画を共有します。

妊婦さんとご家族が、
「この病院なら安心して赤ちゃんを迎えられる」
と思えるような環境づくりを大切にしています。


■ 清水医師から妊婦さんへのメッセージ

妊婦健診で小さな異常を指摘されると、強い不安を感じるのは当然のことです。
実際に、精密検査に来られる妊婦さんの中には、心配で眠れない日々を過ごしている方も少なくありません。

しかし、胎児心エコーの目的は
「赤ちゃんが元気に生まれ、成長していくために、一番良い準備をすること」
にあります。

検査を受けることで、

  • 本当に治療が必要なのか

  • どのタイミングでどんなケアをすべきか

  • どの病院で出産するべきか

が明確になります。

疑問や不安は、どうか遠慮なく何度でも相談してください。
私たちは、妊婦さんと赤ちゃん、ご家族が安心して出産を迎えられるよう、全力でサポートします。


■ まとめ:胎児心エコーは“赤ちゃんの未来を守るための検査”

胎児心エコーは、赤ちゃんの心臓の異常を早期に見つけ、出生後の治療をスムーズに進めるためのとても重要な検査です。

昭和医科大学病院は、

  • 胎児心エコー認定医が4名

  • 周産期〜小児〜成人をつなぐ総合的な診療体制

  • 専門医による精密な診断・治療計画

を備えており、安心して検査と出産に臨める環境が整っています。

胎児心エコーについて不安や疑問がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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